新・ノラの絵画の時間

西洋美術史・絵画史上重要な画家たちの代表作品と生涯をまとめました。

ルネサンス絵画史まとめ ルネサンス300年の歴史が主要画家と代表作品ですぐわかる入門編

 

 

ルネサンス絵画概論

 

ルネサンスってなに?

 

 ルネサンス(Renaissance)とは、イタリア語のリナシメント(rinascimento)を語源とする「再生」「復興」を意味するフランス語で、14世紀のイタリアの自治都市フィレンツェ(Florence 下記地図参照)で始まった「文芸復興」運動を指します。

 

 この運動では、古代ギリシアやローマを手本とし、中世までのキリスト教中心の視点を、人間を中心にした視点に戻そうとしました。その後、ルネサンスは、西ヨーロッパ各地に波及し、300年ほど(16世紀まで)続きました。

 

 ネーデルランド(フランドル地方)など北ヨーロッパの各地で独立に発生したルネサンスは、イタリアのルネサンスと区別して「北ヨーロッパ・ルネサンス」と呼ばれます。

 

 本項では、イタリア・ルネサンスを扱います。

 

 

ルネサンス絵画の特徴

 

 中世までの2次元的で形式的な絵画に、陰影や遠近法による写実性と表情や仕草による感情表現が加わりました。下図1枚目は1280年にチマブーエによって描かれた聖母子、2枚目は、1506年は、ラファエロによって制作された聖母子です。

 

 2次元で表象的なチマブーエに比べて、200年後のラファエロの作品は、3次元的で極めて写実的になっていることがわかります。

 

    さらに、チマブーエの作品では人物が彫像のようですが、ラファエロの作品では、人物の表情やしぐさが人間らしくなっています。このような写実性と人間味の表現がルネサンス絵画の特徴です。

 

 

 

 特に、ブルネレスキの開発した一点透視による遠近法レオナルド・ダ・ヴィンチによる人体解剖の成果、ヤン・ファン・エイク(北ヨーロッパ・ルネサンスの画家)による油彩技法の確立は、空間や人体を写実的に表現する上で欠かせないものでした。

 

 ルネサンスの画家たちは、これらの革新的発見によって、高い写実性を実現すると同時に、ギリシアやローマに習い、人体の理想の美を追求しました。

 

 下図1枚目は遠近法を用いた「受胎告知」、2枚目は、レオナルド・ダ・ヴィンチによる解剖図(彼は生涯に30体の遺体を解剖しました)、3枚目はダ・ヴィンチの「ウィトルウィウス人体図」(ローマ時代から、神の創った人間は理想的なプロポーションを持つと考えられていました)です。

 

 

 

 

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 ルネサンス絵画の3つの特徴とそれを支えた4つの技術革新

 

ルネサンスがイタリアで起こった背景

 

 ルネサンスがイタリアで起こった背景には、権力闘争で教皇の威光が低下し、キリスト教の影響力が低下してきたこと、ビザンツ帝国やオスマン帝国から古代ギリシアやローマの文化が流入してきたこと、東方貿易で富を築いた富豪が芸術の強力なパトロンとなったことなどが挙げられます。

 

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 ルネサンスがイタリアで発生した4つの理由(中級編)

 

ルネサンス絵画の時代区分

 

 300年ほど続いたイタリアのルネサンスですが、絵画史ではこの間を4つの時代に区分しています。

 

・前期ルネサンス(Proto-Renaissance)1300〜1400年

    写実性や感情表現が現れ、不正確ながらも遠近法を使うようになった時代です。イタリアのフィレンツェとシエナが絵画の中心地でした。

 

・初期ルネサンス(Early Renaissance)1400〜1490年頃

    透視図法の発見、油彩画の確立、人体解剖の発達など技術革新の時代です。富を蓄積した一族がパトロンとなって芸術を牽引しました。フィレンツェが絵画の中心地でした。

 

・盛期ルネサンス(High Renaissance)1490年頃〜1527年

    ダ・ヴィンチ、ミケランジェロ、ラファエロなど巨匠が活躍した時代です。教皇庁の潤沢な資金により、ローマが絵画の中心地になりました。

 

・マニエルスム期(Mannerism)1527〜1600年

   

 

ルネサンスの重要な画家と代表作品一覧

 

 画家は生年順になっています。このページのトップにある目次から直接画家に飛ぶこともできますが、順番に見て行った方がルネサンスの絵画の変遷がわかります。

 

前期ルネサンス(1300〜1400年)

 

チマブーエ(Cimabue 1240〜1302)

 フィレンツェ派の開祖ジョット・ディ・ボンドーネとシエナ派の開祖ドゥッチョ・ディ・ブオニンセーニャの師。下の作品からわかるように遠近法の片鱗が見て取れます。この時代なら私でも巨匠になれそう。

 

 

ジョット・ディ・ボンドーネ(Giotto di Bondone 1267 - 1337)

 ルネサンスの開祖と目されるイタリア・フィレンツェ派最初の画家です。正確ではないものの、初めて絵画に遠近法を取り入れ、写実的な人物を描きました。

 

 

ドゥッチョ・ディ・ブオニンセーニャ(Duccio di Buoninsegna 1255 - 1319)

 ジョットのライバルでイタリア・シエナ派の開祖です。イタロ・ゴシック様式(イタリアのゴシック様式のこと)を発展させました。

 

 

シモーネ・マルティーニ(Simone Martini 1284 - 1344)

 ドゥッチョの弟子で南フランスのアヴィニョンに渡り、国際ゴシックの礎を築きました。国際ゴシック様式は、宮廷ゴシック様式とも呼ばれ、たいへん豪華です。国際ゴシックは、ルネサンス様式におされ15世紀には衰退してしまいます。

 

 

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 前期ルネサンス絵画史まとめ

 前期ルネサンスのその他の主要画家と代表作一覧

 

初期ルネサンス(1400〜1490年頃)

 

フィリッポ・ブルネレスキ(Filippo Brunelleschi 1377 - 1446)

 透視図法を使った遠近法(一点透視図法)を世界で初めて開発したルネサンス最大の天才建築家です。サンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂のクーポラ(ドーム部分)を建設しました。

 

 

ドナテッロ(Donatello 1386〜1466)

 ブルネレスキの親友で世界初の遠近法を使った彫刻を制作しました。右側女性の背景部分の建築物が透視図法で制作されています。

 

 

マサッチオ(Masaccio 1401 - 1428)

 彗星の如く現れた謎の天才画家で27歳でライバルに殺害されたと言われています。世界初の透視図法を使った作品(下図)を制作しました。最初のチマブーエの作品と比較して下さい。たかだか100年でこの進歩!世界初にしてこの完成度!恐ろしい才能です。

 

 

ジョヴァンニ・ベッリーニ(Giovanni Bellini, 1430〜1516)

 父親のヤーコポ・ベッリーニ(Jacopo Bellini、1400〜1470)も画家でヴェネツィア派の開祖です。ヴェネツィア派はジョルジョーネ、ティツィアーノ、ティントレット、エル・グレコなどを輩出しています。

 

 

アンドレア・マンテーニャ(Andrea Mantegna, 1431〜1506)

 ヤーコポの義理の息子でパドヴァ派の開祖です。人体を短く描いて遠近感を出す「短縮遠近法」の開発者でもあります。

 

 

アントニオ・デル・ポッライオーロ(Antonio del Pollaiolo, 1429/1433〜1498)

 後述のヴェロッキオのライバルで弟子時代のレオナルド・ダ・ヴィンチに解剖を指導した可能性が指摘されています。筋肉の表現に解剖の成果が活かされています。ダ・ヴィンチはポッライオーロ工房のメンバーに同性愛で訴えられたことがあります。

 

 

アンドレア・デル・ヴェロッキオ(Andrea del Verrocchio, 1435〜1488)

 レオナルド・ダ・ヴィンチの師です。ミケランジェロラファエロは彼の孫弟子に当たります。彼の工房にはボッティチェッリも出入りしていました。下図「受胎告知」は一般にダ・ヴィンチの作品として知られていますが、ヴェロッキオが構図を決め、ダ・ヴィンチが手伝いました。

 

 

ドメニコ・ギルランダイオ(Domenico Ghirlandaio, 1449〜1494)

 ヴェロッキオの一番弟子でミケランジェロの師に当たります。

 

 

ピエトロ・ペルジーノ(Pietro Perugino, 1448頃〜1523)

 ヴェロッキオの弟子でラファエロの師に当たります。

 

 

 サンドロ・ボッティチェッリ(Sandro Botticelli, 1445 - 1510)

 1400年代終盤、フィレンツェでは大パトロンで統治者でもあるロレンツォ・デ・メディチの影響で新プラトン主義(プラトンとは関係がない)が流行し、ヴィーナスが描かれるようになりました。それまで異教の神を描くことはタブー視される傾向にありましたが、この頃から古代神話画が頻繁に描かれるようになり、また、ヴィーナスという名目の女性のヌード画が数多く制作されるようになります。

 

    ボッティチェッリは、神秘主義的で独自の様式をもつため、どちらかというと本流から外れた画家ですが、優れた作品を残しています。

 

 

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 初期ルネサンス絵画史まとめ

 

盛期ルネサンス(1490年頃〜1527年)

 

レオナルド・ダ・ヴィンチ(Leonardo da Vinci、1452〜1519)

 ルネサンス最大の巨人です。絵画だけでなく、多くの分野に足跡を残しました。彼の発明や発見は膨大な手稿として残っています。ダ・ヴィンチは「絵画は科学である」と言い切り、平面上に3次元空間があるように見せることこそが重要であるとしています。

 

 

 

ミケランジェロ・ディ・ロドヴィーコ・ブオナローティ・シモーニ(Michelangelo di Lodovico Buonarroti Simoni、1475〜1564)

 ルネサンスの最重要彫刻家・画家です。システィーナ礼拝堂のフレスコ画が有名です。100歳近くまで生き(しかも、死因は老衰ではなくペスト)、当時最も成功した芸術家ですが、気難しく、弟子が居着きませんでした(画家で美術史家のジョルジョ・ヴァザーリは彼の弟子)。ダ・ヴィンチのことは嫌い、ラファエロのことは大嫌いでした。

 

 

 

 

ラファエロ・サンティ(Raffaello Santi、 1483〜1520)

 マドンナ画とヴァチカン宮殿の「ラファエロの間」が有名です。ラファエロはルネサンス様式の完成者とされ、自分で革新的なことをしたわけではありませんが、ルネサンスの技術を吸収し、統合して洗練された作品を残しました。野心家で効率主義、権力主義、拝金主義的傾向がありましたが、志半ばで夭折しています。

 

 

 

ジョルジョーネ(Giorgione、1477/1478〜1510)

 ベッリーニ一族によって始まったヴェネツィア派最高の天才で、西洋絵画史上最も謎に包まれた画家です。世界初となる風景画(人物や物語よりも、その情景に重きを置いた絵画)を制作しました。ティツィアーノの兄弟子で、彼を指導した画家でもあります。

 

 

ロレンツォ・ロット(Lorenzo Lotto、1480〜1556/1557)

 各地を転々とした放浪の画家です。美術史上初めて自己の内面を描く絵画を制作しました。下図はロットが死亡する前年の作品です。この時、彼は病気で目もほとんど見えず、貧困にあえいでいました。この作品の下段は彼の信仰を表し、上段の誰もいない部屋は彼の孤独な人生を表しています。右から部屋に入ろうとしているのはロット自身、部屋には彼の作品があります。私が見た数多くの絵画の中で最も心に突き刺さった作品です。

 

 

ティツィアーノ・ヴェチェッリオ(Tiziano Vecellio、1488/1490 - 1576)

 師であるジョルジョーネの名声を引き継ぎ、ヴェネチア派で最も成功した画家です。ミケランジェロには「職人」と揶揄されています。

 

 ティツィアーノとラファエロは、ダ・ヴィンチやミケランジェロのように何かを追求するのではなく、お金のために描いていた感じが作品から伝わってきます。しかもティツィアーノはラファエロほど完成度も高くありません。個々の作品のクオリティーは巨匠の中で一番低いでしょう(下図は完成度の高い作品を選んでおきました)。

 

 

 

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 盛期ルネサンス絵画史まとめ

  

マニエルスム期(Mannerism)1527〜1600年

 

ヤコポ・ダ・ポントルモ(Jacopo da Pontormo, 1494 - 1557) 

 ポントルモはダ・ヴィンチの工房から始まり、多くの工房を転々とし、最後にアンドレア・デル・サルトに師事しました。ねじれたようなポーズが特徴です。

 

 

アーニョロ・ブロンズィーノ(Agnolo Bronzino, 1503 - 1572)

 ポントルモの弟子です。

 

 

パルミジャニーノ (Parmigianino、1503 - 1540)

 ラファエロの影響を受け、その後、独自の画風を確立しました。ローマで活躍しましたが、赤痢で37歳で夭折しています。

 

 

ティントレット(Tintoretto, 1518 - 1594)

 ヴェネチア派でティツィアーノの弟子でした。

 

 

ジュゼッペ・アルチンボルド(Giuseppe Arcimboldo、1526 - 1593)

 ミラノで生まれ、ウィーンで宮廷画家をしていました。非常に個性的で、果物などの生物を用いて肖像画を描く彼の手法は広く知られています。

 

 

エル・グレコ(El Greco、1541 - 1614)

 ヴェネツィア領のクレタ島で生まれ、ティツィアーノに師事し、その後スペインで活躍したマニエルスム期の巨匠です。

 

 

 以上、ルネサンス絵画の入門編でした。ルネサンスの詳細と各画家についての記事も順次アップします。

 

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