新・ノラの絵画の時間

西洋美術史・絵画史上重要な画家たちの代表作品と生涯をまとめました。

前期ルネサンスの絵画 14世紀のルネサンス主要画家と代表作品一覧

 

 

前期ルネサンス(1300〜1400年)の主要画家とその代表作品

 

    この項は「ルネサンス絵画史まとめ(入門編)」前期ルネサンス絵画史のまとめ(中級編)」の続きになります。したがって、前項の本文中で紹介したジョット、ドゥッチョ、マルティーニはリストにはいっていません。3名に関しては前項をご参照ください。

 

 前期ルネサンスは、1300年から1600年まで続いた300年の最初の100年です。この間にイタリアのフィレンツェではルネサンスが始まり、シエナでは、イタロ・ゴシックが発達して国際ゴシックの萌芽ができました。

 

 本項では、1300〜1400年間のイタリア・フィレンツェとシエナ出身の画家とその作品に焦点を当て、「フィレンツェ派」「シエナ派」として生年順にまとめました。。

 

 

フィレンツェ派    ジョットの弟子と後継者たち(ほぼ生年順に並んでいます)

 

・マーゾ・ディ・バンコ(Maso di Banco, ? 〜1348)

    マーゾはジョットの最も卓越した弟子であったと言われています。美しい遠近法と大変洗練された画面がその特徴です。とても丁寧な仕事です。

 

 

 

・タッデオ・ガッディ(Taddeo Gaddi, 1300〜1366)

    サンタクローチェ聖堂にある「羊飼いへの天使の知らせ」の夜の場面(下図1枚目)は特に美しく、西洋絵画史上はじめて夜を描いた絵画として知られています。この手法はイルミネーション効果として知られるようになりました。タッデオは人物の表情の描写に大変優れた画家です。

 

 

 

・オルカーニャ(Orcagna/Andrea di Cione di Arcangelo 1308〜1368)

    ジョットの弟子であるオルカーニャは、画家であると同時に彫刻家でもありました。彼の作品は、師であるジョットよりもゴシック性が強く、ゴシックの装飾性とルネサンス様式の融合が大きな特徴です。彼の作品は同時代の多くの画家に影響を与えました。

 

    オルサンミケーレ教会のタベルナクルはオルカーニャの彫刻作品でゴシック彫刻の傑作と言われています。2枚目はフレスコ画「死の勝利」です。この頃は黒死病と呼ばれたペストが猛威をふるい、人口の3分の1が死滅しました。このため、多くの人々が死に直面し、贖罪を求めていました。

 

 

 

・フランチェスコ・トライニ(Francesco Traini 活動時期:1321〜1336)

    オルカーニャの弟子で後継者のイタリアの画家ですが、彼のサインのある作品は1つしかないため、彼のものとされる作品の多くは学者の推測の域を出ていません。

 

 その一つはピサにある墓地コンポサント・モニュメンターレの「死の勝利」ですが、こちらは第2次世界大戦で被災し悲惨な有様です。この作品はブオナミーコ・ブファルマッコ(Buonamico Buffalmacco 1315〜1336)の作品であるとも言われています。でも、なんだかよくわかりませんね。

 

 

・アルティキエーロ(Altichiero da Verona 1330〜1390)

    ジョットの後継者の一人で、ヴェローナとパドヴァで活躍しました。ヴェロネーゼ派の創始者の一人に数えられています。衣服の質感などの細かい描写に大変秀でています。下図2枚目は1枚目の拡大図です。

 

 

 

・アンドレア・ボナイウート(Andrea Bounaiuti 1346〜1379)

    アンドレアはジョットオルカーニャの影響を受け、サンタ・マリア・ノヴェッラのスペイン聖堂のフレスコ画を描き上げました。下図2枚目は1枚目の拡大図です。

 

 

 

 

シエナ派  ドゥッチョの弟子と後継者たち(ほぼ生年順に並んでいます)

 

・アンブロージョ・ロレンツェッティ(Ambrogio Lorenzetti 1290〜1348)

    アンブロージョのシエナ市庁舎のフレスコ画「善政と悪政の寓意」は、前期ルネサンス世俗画の傑作とされています。このフレスコ画は、「善政」とその効果、「悪政」とその効果が一目でわかるようになっています。

 

   下図1枚目は「善政の寓意とその効果」です。大変繊細なタッチの作品であることが見て取れます。善政によって市民は踊り暮らしています。

 

    一方、下図2枚目の悪政は、見るからに悪そうでツノが生えてる人が政治を仕切っています。その結果、街は荒廃してしまいました。

 

 

 

・ピエトロ・ロレンツェッティ(Pietro Lorenzetti 1280〜1348)  

    アンブロージョ・ロレンツェッティの兄に当たるシエナ派の画家です。ピエトロ・ロレンツェッティはペストで亡くなりました。彼のマスターピースとなるのはアッシジ・聖フランチェスコ教会のフレスコ画です。

 

 

 

・タッデオ・ディ・バルトーロ(Taddeo di Bartolo 1363〜1422)

 シエナ派の画家。マルティーニやロレンツェッティの影響を受けていると言われています。

 

・サセッタ(Sassetta / Stefano di Giovanni 1392〜1450)

 サセッタもシエナ派の画家ですが、その画風はかなり個性的かつ幻想的で、見ていて楽しくなります。この時代において一番独創性の高い画家です。

 

 

 

 

・ジェンティーレ・ダ・ファブリアーノ(Gentile da Fabriano 1360〜1427)  

    国際ゴシック様式を代表する画家の一人です。下図2枚目は1枚目の拡大図ですが、ゴシックの装飾性とルネサンスの写実性の極めて高い融合が見て取れます。祭壇画の傑作の一枚です。

 

 

 

・フラ・アンジェリコ(Fra' Angelico / Beato Angelico 1390〜1455)

 アンジェリコはファブリアーノと同世代の国際ゴシックを代表する画家です。ファブリアーノ同様、ゴシック様式と先進的なルネサンス様式とが混在していることが見て取れます。大変美しい作品です。

 

 国際ゴシック様式はアンジェリコとファブリアーノで頂点を極めましたが、その後、ルネサンス様式に人気を奪われ衰退していきました。

 

 

             

 

                                             

 以上、前期ルネサンスの代表的な画家と作品でした。この中では、特に最後の2人、ファブリアーノとアンジェリコが有名です。

 

 前期ルネサンスは、1400年代の初期ルネサンスへと続きます。初期ルネサンスは、西洋絵画史上最も革新のあった期間であり、現代絵画の基礎ができました。

 

 

/*トップに戻るボタン*/